嶋田漁業部

「うま味」とは何か? 実は科学的に根拠があります

2022.03.29

うま味成分 「うま味」とは何か? 実は科学的に根拠があります

食べ物でよく使われる言葉「うま味(うまみ)」。これ、単なる主観的なものではなくて、客観的にうま味成分なるものが存在することを、みなさんはご存じでしたか?

しじみ漁師である僕は、しじみの魅力をもっと多くの人に伝えるべく、日々うま味について研究しています。今回は、「そもそもうま味とは何なのか」をテーマに話していきたいと思います。

「おいしさ」と「うま味」は意味が違う!?

「おいしさ」と「うま味」は意味が違う!?

多くの人が勘違いしてしまうのですが、料理を食べて感じる「おいしさ」と、甘味や酸味と同じ“基本味”の一つとして区別されている「うま味」は意味が異なります

おいしさとは?

「おいしさ」は、食感・音・見た目・匂い・シチュエーションなど、とても豊かな文脈をもっています。気心の知れた友人たちと一緒に、スーパーで買ったお肉を庭のコンロでジュージューと炭焼きする。多少焦げたって、みんなでワイワイ食べればおいしく感じるはずです。楽しいバーベキューで味わうお肉の味は、一人で食べる高級牛肉にも劣りません。これが「おいしさ」というやつですね。

つまり「おいしさ」は五感で得られる情報で構成されており、主観的な意味合いが非常に強いといえます。NHKのとある番組では、同じ材料で作っている料理なのに、事前に伝えられた料理名の違いでおいしさの評価が変わってしまうという興味深い実験が行われていました。

うま味とは?

一方で、「うま味」はどうでしょうか。「うま味」は、酸味・塩味・甘味・苦味・酸味と同じように、実在する成分として科学的に根拠がある“基本味”の一つです。当然、この「うま味」は、料理それ自体のおいしさに大きな影響を与えています。

もっともわかりやすい例でいえば、うま味とは“だし”のことです。みなさんもぜひ、試しにだしをとらない味噌汁を作ってみてください。「何かが足りない……」と違和感をおぼえるはずです。その足りない何かの正体こそ、みなさんが直観的に理解しているうま味のことなのです。

「うま味」は20世紀初頭に東大の教授が発見したそうです。世界で初なんですって!

1980年代には、国際的な専門用語として「UMAMI」が正式に使われるようになりました。もちろん、「うま味」は日本人が発明したのではありません。もともと世界各国の食文化の中に存在しており、伝統料理を支えてきました。日本をはじめとするアジア地域では、古くから豆などの穀類や魚介類の「うま味」が活躍しています。西洋諸国では、牛やヤギの乳、トマト、肉の「うま味」が活かされています。

昔から人々は本能的にうま味を理解していたのですね!

うま味成分の代表は「グルタミン酸」「イノシン酸」「グアニル酸」

うま味成分の代表は「グルタミン酸」「イノシン酸」「グアニル酸」

代表的なうま味の成分には、アミノ酸の「グルタミン酸」、核酸の「イノシン酸」「グアニル酸」があります。

アミノ酸の「グルタミン酸」とは

昆布だしのうま味の成分としても知られるグルタミン酸は、非必須アミノ酸の一つ。国内で初めてうま味の“正体”として発見された成分です(グルタミン酸自体は19世紀のドイツで発見されています)。海藻に多く含まれており、体内のアンモニアを解毒する作用があります。

グルタミン酸が含まれている代表的な食べもの ねぎ、にんじん、長ネギ、生姜、チーズ、緑茶など

核酸の「イノシン酸」とは

核酸は、細胞の生まれ変わりに欠かせない物質のこと。それを構成する成分の一種がイノシン酸です。かつお節に含まれていることで知られており、グルタミン酸と合わさることで協力なうま味に変わります。

イノシン酸が含まれている代表的な食べもの かつお節、煮干し、豚肉、牛肉、魚介類など

核酸の「グアニル酸」とは

イノシン酸と同じく核酸を構成するグアニル酸は、ホタテや干ししいたけに含まれています。イノシン酸との相性が良いため、食材を組み合わせてだしをとると、非常にうま味が増します

グアニル酸が含まれている代表的な食べ物

干ししいたけ、きのこ類など

組み合わせるとさらにウマイ!「うま味の相乗効果」

組み合わせるとさらにウマイ!「うま味の相乗効果

うま味の特性を利用すれば、料理がグッと奥深くなります。昆布(グルタミン酸)、かつお節(イノシン酸)、干ししいたけ(グアニル酸)を個別で使うよりも、これらを組み合わせてだしをとることで、うま味が非常に強くなることが研究で明らかになっています。これが「うま味の相乗効果」という現象です。

そして昔の人々は、うま味の相乗効果のことを経験的に理解しており、食材を上手に組み合わせて美味しい料理を作ってきました。「昆布とかつお節」といえば、日本人にはお馴染みですが、文献をさかのぼると、なんと奈良時代からすでに存在する組み合わせなのです。

ページTOPへ戻る