日本の食文化には欠かせない存在の魚。
栄養満点でバランスの取れた食品なので、家庭にもどんどん取り入れていきたいですよね。
最近ではスーパーの魚売り場で、天然魚だけでなく養殖魚もよく目にするようになりました。
皆さんは魚の養殖について、どのようなイメージをお持ちですか?
「なんとなく養殖より天然のほうが高品質な気がする」と思っている方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、一概にそうとは言えません。
そこで今回は、魚の養殖と天然の違いや、それぞれの特徴について詳しくお伝えしていきます。
ぜひ今後のお買い物に役立ててくださいね。
目次
魚の養殖と天然の違い
養殖魚について
まず養殖魚とは、池やいけすなどの養殖場で人為的に育てた魚介類を指します。魚を稚魚のうちから養殖場に入れ、水質や水温、エサなどを調整しながら人の手によって育てます。
養殖魚は、生育環境や栄養状態による個体差が少なく、見た目や味、肉質が安定しているのが特徴です。旬の時期でなくとも味が保証され、個体差も少なく、変わらない品質を保つことができます。
エサの管理をしているため安全性が高く、栄養価も調整可能です。
また出荷にタイミングを合わせ、必要な分だけ活け締めにできるため鮮度が良いです。生きたまま輸送することも可能なため、鮮度が高いうちに魚を全国に届けられます。
環境保全の観点では、限りある海洋資源を守りながら、水産物への需要を満たすことが可能です。
天然魚について
天然魚とは、人の力が加えられていない自然のままの魚介類を指します。海や川に生息しているところを捕獲したもので、自然な育ち方をしていることが特徴です。
天然魚は大自然の中でしっかり泳いでいるため、身が引き締まっており、旬には脂乗り美味しくなります。
また光が届きにくい海中で育つので、鱗が日に焼けず、色鮮やかで見た目が良いです。
身は歯応えがあり、旨みと香りが強いものが多い傾向にあります。養殖魚との一番の違いは、やはりこの味深さといえるでしょう。
養殖魚と天然魚の違い まとめ
天然魚 | 養殖魚 | |
味 | 旨味や香りが強い | まろやかな味わい |
脂 | 旬であれば脂が乗っている | 旬を問わず脂が多い |
硬さ | 身が引き締まっている | 身が柔らかめ |
メリット | ・色鮮やかで見た目が良い ・歯応えがあり、旨みと香りが良いものが多い | ・見た目や味、肉質が安定している ・旬の時期を問わず品質を保つことができる ・安全性が高く、栄養価も調整可能・鮮度が良い・海洋資源を守れる |
デメリット | ・個体差が大きく、肉質や味にバラつきが出やすい ・鮮度をコントロールすることが難しい ・寄生虫がいる確率が養殖よりも高い | ・自然界に比べ病気が蔓延しやすい ・天然物に比べ運動不足になりやすい ・抗生剤やホルモン剤が投与されることもある |
養殖魚について
養殖魚と天然魚の違いが分かったところで、続いては養殖魚について詳しく解説します。
養殖されている魚
日本国内ではさまざまな種類の魚が養殖されており、2021年の養殖総生産量はブリ(40%)に次いでマダイ(27%)、カンパチ(12%)が挙げられます。
その他には、クロマグロ、トラフグ、シマアジなども養殖によって生産されています。
ここで挙げた魚はすべて、天然よりも養殖の生産量のほうが多くなっています。
皆さんの食卓にも、養殖魚が並んでいるかもしれませんね。
養殖魚の育ち方
1.稚魚を養殖場に入れる
魚の養殖は、稚魚を養殖場に入れることから始まります。
エサや、水質、水温を調整しながら丁寧に育てます。
2.大きく育てる
養殖場の稚魚は、魚の粉や穀類から作られた固形のエサや、粉末状の配合飼料とイワシやサバを混ぜたエサなどを食べて大きくなります。
稚魚の口の大きさによって、エサのサイズは変わります。
3.引っ越しを行う
運動量も増え、エサをたくさん食べてどんどん大きくなる魚たち。
そのままのいけすでは狭くなってくるので、大きないけすに移します。
4.健康管理の徹底
魚の健康診断はもちろん、成長状況、エサの管理から、水質、水温、プランクトンなどの検査まで、きめ細かく行います。
5.送り出す
最後に、立派に成長した魚たちを送り出します。傷つかないよう丁寧に扱います。
最近では生きたまま運搬できるようになり、より新鮮で美味しい魚を送り出せるようになりました。
ブランド養殖魚の開発
生産者が魚のエサや生育環境にこだわって育てる「ブランド養殖魚」を知っていますか?
エサや生育環境を工夫することで、品質を高めるとともに、同じ種類の他の魚とは違った独自の魚を育て、商品化しているのです。
たとえば、飼料に柑橘系の果実を混ぜて育てたフルーツ魚は臭みがなく、高い鮮度を保てると定評があります。
元祖フルーツ魚の柚子鰤王(ゆずぶりおう)は、鹿児島県東町漁協にて生産・販売されています。エサに柚子を使うことで魚の臭みを消し、さっぱりとした後味を実現しました。
同じくフルーツを使った餌で育てた魚としては、大分県が中心となって開発したかぼすブリ、かぼすヒラメなどもいます。
その他、3年がかりで開発されたプレミアムDHAブリは、通常の1.5倍ものDHAを含んだ養殖ブリです。三重県の尾鷲物産と高知大学で共同開発されました。
DHAとは、私たちの身体に必須な脂肪酸のことで、体内の免疫反応の調整や、脂肪燃焼を促進するといわれています。
プレミアムDHAブリは、「DHAの濃度が可食部(背+腹)100g当たり3g以上の養殖ブリ」といった明確な出荷基準が定められているブランド養殖魚です。
養殖のおかげで生食が可能になった魚
日本では昔、サケ・マス類(サーモン)を刺身で食べていませんでした。アニサキスやサナダムシといった寄生虫が含まれている場合があったためです。
これらの寄生虫は加熱のほか、−20℃以下で24時間以上冷凍すると死滅します。そのため、凍ったまま食べる「ルイベ」といった食べ方もされていましたが、溶けると水っぽくなり、刺身のような食感は楽しめませんでした。
技術が進み、寄生虫が存在しない配合飼料をエサとして使用し養殖することにより、刺身で食べても安全なサケ・マス類が初めて生産できるようになったのです。
今、サケ・マス類の刺身や寿司が普通に食べられるのも、養殖技術が確立したおかげです。
天然魚について
養殖魚の次は、天然魚について詳しく見ていきます。
天然魚の育ち方
自然界で育つ天然魚は、一体何を食べて生きているのでしょうか。
魚の種類によってエサの好みはさまざまですが、主にプランクトンや、海藻やサンゴ、自分より小さな魚などを食べています。
そして海や川を自由に泳いで生活しています。
天然でしか食べられない魚
魚の養殖が盛んに行われている現在でも、養殖されておらず天然でしか食べられない魚がまだまだ存在します。
養殖されていない魚には2パターンあり、「技術的に養殖ができない魚」もしくは「技術的には可能だが商業的に採算がとれない魚」です。
技術的に養殖できない魚としては、アカムツ(のどぐろ)、キンキ、金目鯛などの高級魚が挙げられます。
これらは深海魚であるため、生息環境を再現するのが難しかったり、生態について分かっていないことが多かったりといった理由から、養殖ができない現状にあります。
漁獲量の減少
近年、日本では漁獲量が減少傾向にあります。
国内漁獲量のピークは1984年の1282万トンでしたが、2020年には423万トンとなり、36年間で約3分の1にまで減っています。
農林水産省の見解では、漁獲量減少の原因について以下のような内容を挙げています。
- 各国の排他的経済水域の設定による海外の漁場からの撤退
- マイワシの漁獲量の減少
- 漁場環境が悪くなったこと
マイワシの漁獲量の減少は、海水温度の上昇による海洋環境の変化によって、資源量が減少したことが主な要因と考えられています。
その他、漁獲量減少の原因としては、世界的な人口増加と水産物の需要の増加で、水産物の取り合いが起こっているという背景もあります。日本は中国や東南アジアに買い負けている状態にあります。
また国内の漁獲枠が大きすぎて、資源管理が機能していないという考えもあります。魚を獲りすぎて減ってしまっているということですね。
さまざまな原因が考えられますが、世界全体の水揚量は増え続けているのに対し、日本でだけ多くの魚が減り続けているというのは事実です。
まとめ
魚の養殖と天然はどう違うのか、それぞれの特徴ついてお伝えしてきました。
どちらにもメリット・デメリットがあり、近年の背景や動きがあることを知っていただけたかと思います。
では、家庭に取り入れるなら養殖魚と天然魚どちらが良いのでしょうか?
これはどちらが良いということはなく、用途やお好みによって使い分けることで、より美味しく魚を食べることにつながります。
今回の記事を参考に、味のお好みや、気になるポイント、料理の用途などに応じて魚を選ぶ際に役立てていただければ幸いです。
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